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キーンコーンカーンコーン。
取り敢えず、初めての授業も終わった。勉強にもついていけそうだ。うん、大丈夫。
「じゃあなー」
「うん。また明日」
えっと、これから第一中と第二中の間にある公園で、顔合わせか。隊長が遅れるわけにはいかないよね。公園の場所を確認して、靴を履き替える。
「んー、飛べないのがもどかしい」
青い空を見上げて、ぽつりと呟く。何で、人間は飛べないんだろう。なんて、どうでもいいことを考えていると、公園が見えてきた。
「おっ、一番乗り」
よかった。にしても、水希も来てないとは。まぁ、まだ十分も時間があるからね……少し急ぎすぎたかな。
「風翔さん!」
噂をすれば何とやら。黒髪を揺らしながら、水希が公園に来た。
「早かったね」
「風翔さんこそ。さすがです」
何が「さすが」なんだろう。どう返事をしたらいいか分からず、あははと苦笑いを浮かべる。
「へぇー。お前が隊長さん?」
足音と共に、金髪の男子が公園に来た。どこか不敵な笑みを浮かべながら。あぁ、これはあれだ。僕のことを認めてないやつだ。
「うん。天狗の一族、緑神風翔だ。君は?」
「風翔ね。俺は、赤石朝火。妖狐の一族だ」
「君が朝火くんか。よろしくね」
優しく微笑むと、朝火くんは不満そうに眉をひそめた。僕に近づいて、僕の制服の襟を掴む。
「勘違いするな。俺は、お前に従う気はねぇんだよ」
そう言って、掴んでいた襟を離した。そう言われてもな……。返事に困っていると、水希が朝火くんに言う。
「おい! 風翔さんに向かって、なんだその口の利き方は!」
水希が朝火くんに、つかみかかろうとする。さっきもだけど、何故かそれを見ても、怖いとは思わなかった。胸の底で何かが、静かに沸き立つような感じがする。
「水希、やめて」
とっさに出た声とは思えないほど、落ち着いた低い声が出た。水希は、ピタリと動きを止める。
「最初から、全員に認めてもらえるなんて思ってないよ。僕でさえ、まだ信じられてないんだから」
自分で言いながら、思わず笑みがこぼれる。そうだよなぁ。まだ、僕が隊長だなんて信じ切れてないんだよなぁ。
「だから、暴力はやめてね」
「は、はい……」
水希が、目を丸くして力なく呟いた。うん、よかった。朝火くんも何も言わずに、きょとんとしている。そんな顔しなくても、僕だって意見くらい言うよ。
「あの、話は終わりましたか?」
最後に公園に来た少年が、静かに言った。銀色の髪に、キリッとした水色の瞳。かっこいい系か……おまけにメガネとは。
「あぁ、ごめんね。君が氷真くん?」
そう訊くと、彼はこくりと頷く。これで全員揃ったね。
「じゃあ、それぞれ自己紹介しようか。僕は緑神風翔。天狗の一族で、風を操るのが得意なんだ。よろしくね」
にこりと微笑むと、氷真くんが「あぁ、風翔さん」と呟いた。僕が隊長だって分かったらしい。朝火くんみたいに、反対しているってわけではなさそう。
「チッ。俺は、赤石朝火。妖狐の一族……火を操るのが得意な一族だ」
朝火くんは、火を操るのが得意なんだね。先に自己紹介されたのが嫌だったのか、水希が朝火くんをキッと睨みつける。
「はぁ……。俺は青木水希。水を操るのが得意な一族、蛟の一族だ。風翔さん以外に従うつもりはないんで、そのつもりで」
水希……相変わらずだね。恥ずかしいけど、今は心強いな。
「じゃあ、最後に。銀川氷真です。雪女の一族で、氷を作ったり、凍らせたりするのが得意です。よろしくお願いします」
淡々と言った氷真くん。雪女の一族なんだね。これで全員か。皆、特徴的な力を持ってるんだね。何だか面白い。
取り敢えず、全員の力は覚えておかないとね。仕事が入った時に、素早く指示を出せるように。
「これで全員だね。これから……」
「よろしく」と言おうとした時、空から矢が飛んできた。木でできた矢だね。誰が……あっ。
「この矢、何か紙がついてるな」
そう、朝火くんが言って矢から紙を取った。それは、僕の仕事じゃ……。まぁいいか。
「何か書いてある?」
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