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 三回という回数制限付きで悪の組織の下っ端になることを大堂(ダイドウ) が了解したのは、娘の活躍を目の前で見られるからだった。  悪の組織ではなくエキストラ、もとい悪の組織にひどい目にあわされる被害者という選択肢もあったのだが、それでは娘の前に姿を見せなくてはいけない。いくら変身し、簡単には身バレしないヒーローであろうとも、父親の姿を見つけたら緊張して委縮してしまうかもしれない。それを慮ってのことだった。  だが、被害者を選ぶほうが圧倒的に多いということをあとからきいて、少し後悔した。娘、もしくは息子に助けてもらうというのはドラマ性があり、親は子どもの成長を感じられ、子ども側としても親を助けるという特大の親孝行ができる。どちらにとってもお得なプランということらしい。 「なるほど、それも悪くないな」と変身した娘の腕に抱えられる自分の姿を想像しながら呟くが、もう遅い。  なんせ今、娘と対峙してしまっているのだから。
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