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3.君のすべてが愛おしくて
「もうお昼ごはんよ。そろそろ……」
そう言いながら部屋に入ってきたママさんと、不意に目が合った。
ママさんがなぜか、僕の方に手を伸ばす。
「ユイ、落っこちそう」
「あ!」
突然ユイが、両手を勢いよく頭に上げた。
カラフルに塗られたおしゃれな爪。いかにも女子高生らしいその破壊力に、僕は身も心もとらえられてしまう。
直後に、僕の顔をのぞきこむユイ。
(ユイ……!)
ようやくユイと目が合った僕は、急な展開に驚きながらも、喜びに包まれた。
全身に感じる、君のぬくもり。
ひたひたと、胸の中が温かいもので満たされていく。
……今日もかわいいよ、ハニー。
「こんなとこに!」
僕を見つめたまま、ユイが叫んだ。
「ずっと探してたの? 自分でそうしたの忘れて」
首を傾げたママさんに、
「そうなのー! 片付けてたら、鼻に汗かいて、ずれてきちゃって」
ユイがほっとしたような声で言う。
「でも、机の上が物でいっぱいだったから。なくさないようにって、とりあえず頭の上に、カチューシャみたくしてたんだけど」
「ああ、『ないよないよー』ってやつね。マンガでよくある」
ママさんが手探りで何か探す仕草をして、ふたりはおかしそうに笑う。
もう一度僕を抱きしめたユイが、笑顔で叫んだ。
「もー! めちゃめちゃ探したよ。私のメガネ!」
……うっかりさんな君も、大好きだよ。ハニー。
【 了 】
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