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鞄をひっ掴み、校舎を出た私達。目の前には、まあ絵になる美男美女カップルが歩いている。
神田龍勇の隣には、私程じゃないが、それなりに可愛い女子がいた。
ぱっちりとした目を縁取る睫毛は長く、透き通るような白い肌は私も羨ましいとさえ思う。長い髪も艶があって、天使の輪が出来ている。Tシャツとスキニーのシンプルすぎて、悪く言えば地味な服装が、かえってスタイルの良さを際立たせていた。
全く持って気に入らない。
あの野郎…マザコンみたいな事言いながら、普通に女がいるんじゃないの!
「うわっ、可愛い子じゃん!目でっか!睫毛長っ!」
「マジ綺麗ー。歩美と系統違うね。」
「それなー。あと、見た感じ優しさ滲み出てるし。」
「歩美が滲み出してるの、性格の悪さだからな。」
「マジそれ。告白されて付き合っても、すぐに別れてくれって言われてんもん。」
「ぶっ殺すぞあんたら。」
私に勝手な幻想を抱いて、勝手な理由で離れていく方が悪いのよ。性格のきつさで別れるならまだマシな方。多いのは、私が『可愛い事が出来ない』から。素の自分を出したとたん、周りは冷めていく。
美人だから、可愛いから。馬鹿だと見た目だけと笑われ、頭が良いと敬遠されて、どうしろというのか。
大好きな空手も理解されない。可愛いんだから辞めろとか、茶道やバレエ、ピアノみたいな女の子らしい物ならいいのにと言われた事もある。
私をちゃんと見ない、男共が悪いの。性格がキツくなったのも、そんな奴等の影響よ。
「あ、ジムに寄ってもいいかな。ロッカーに教科書置いてきたままなんだ。」
私と話した時よりも、ずっと優しげな声で、あの女に話しかける。ギリギリと歯を食いしばる。
何よ、あんたも他の男と同じなの?
見た目も、中身もちゃんと可愛い子じゃないと、好きになれないって?
「いいわよ。龍勇すごいわね。トレーニングの休憩中にも、勉強するんだもの。」
あのアマ…声も可愛いじゃんか!!
しかも呼び捨て!!!
これは確実に、友達以上の関係が伺える。幼馴染みか?もしくは彼女だろうか?
どちらにせよ、消しておかなきゃならない存在だ。
こういう時の為に、空手を習ってきたようなものよ。少し痛めつけて、2度と神田龍勇に近づかないようにしなきゃならない。
丁度神田龍勇が、女子を置いてジムに入って行った。今ならやれる。
「あんたら、もう帰ってな。あの子と話してくる。」
「えー?まさか、歩美。あんな可愛い子を殴る気?やめときなよ。」
「そうそう。暴力で解決しちゃいけないって。」
「うっさいわね!!直ぐに殴りはしないわよ!!」
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