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2人を放置して、私は女子の元へと向かった。背は私より低いというより、小柄な方だろう。私より歳下なのか。それとも意外と歳上かもしれない。どちらにせよ、未成年で間違い無いだろう。タメ口の方が、私の方が上だってわかるはず。
「ねぇ、あんた!!!」
呼ばれてぱっと、こちらを振り向く。
くそ、顔も小さいな。握り潰してやりたい。
きょとんとした顔も、絵になるのは狡い。
「えっと、はじめましてでいいのかしら?」
「初対面よ。」
そう答えると、女子はあからさまにほっとした顔をした。
「そうよねー。こんな花のように可愛いお嬢さん、1度会ったら忘れるはずないわ。」
「は、花って…。」
そんな褒め方を、されたのははじめてだ。いや、影で男子共が私を『高嶺の花』だと呼んでいるのは知っている。だが、面と向かって言われた事は無い。女子ならば、尚更。自分より可愛い女子は、友達にもならなければ、妬みの対象でしかない。
何ともまぁ、擽ったい気持ちになる。お世辞で言ったようにも見えず、大きな目をキラキラ輝かせて、こちらを見ている。すごく戸惑った顔をしている自分が、瞳に映っていた。
「〜〜ってか、あんた!一体神田君の何なの??」
「神田君?あ、龍勇の事?」
また呼び捨てしやがったよ、このアマ!
「そうよ!あんたがさっきまで一緒にいた、神田龍勇よ!まさか付き合ってないでしょうね!?」
「付き合うも何も…何で龍勇と?よくわからないわ。」
「わからなくないでしょ!?あんなイケメンで、性格も良い男!」
「まぁ、龍勇の事を褒めてくれて、ありがとう!」
「何であんたが礼を言うのよ!!ざっけんな!!!」
本当に嬉しそうに、お礼を言いやがるな。それ絶対、「私の龍勇を褒めてくれてありがとう。」って意味でしょ。マウントとってるんでしょ。わかってるのよ。
ああ、もう、1発お見舞いしたい。
「おぉ、歩美〜。」
背後からの声に、さっと振り返る。
着崩したヤンキー高校の制服を着た、4人の大柄な男達。そのうちの1人が私に声をかけた。
刈り上げた頭。口にも耳にもついたピアスに、ダサいサングラス。
舌打ちがこみ上げてきた。
寄りにも寄って、こいつに会うなんて。
鬼頭剛。
付き合って1番後悔した男だ。私より歳上の高校2年生。地元で偏差値が低く、不良の巣窟と化した学校の生徒。
あんまりにもしつこいから、試しに付き合ってみたら、すぐに体の関係を迫ってきたクズ野郎。無理矢理組み敷こうとしたから、本気で抵抗して、腕の骨を折ってやった記憶が残っていた。
今はもうとっくに治っているようで、折れていた腕で私の肩を抱き寄せて来る。
「汚い手で触んな!!」
「おっかねぇなぁー。こんな可愛い見た目して、勿体無いぞ。」
「なぁなぁ、本当にその子がお前の骨折ったのかよ?全然そうは見えねぇぞ。」
大柄な奴等に囲まれ、流石に怯みそうになる。多人数を相手に、立ち回れる自信は無い。それにこっちは、明らかに武術の1つも齧っていない女子が、お荷物でついている。
逃げ場等無い。
「…貴女、本当にこの人の骨を折ったの?どうして?」
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