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この状況で、暢気な質問を投げかけてくる。危機感どこに置いてきたのよこいつ。
そんなところが、初対面だけど腹立つのよ。
「そうよ、折ったわよ!だから何?こいつが先に襲ってきたから、やり返しただけよ。」
すると、この女。
目を先程よりも、キラキラと輝かせ、可憐な花のような笑顔を見せる。こんな表情が出来るとは、本当に私なんかよりも可愛いのかもと思ってしまった時だった。
「まぁまぁ!何て素晴らしいお嬢さんなのかしら。息子の龍勇にも見習わせたいわ。あの子、骨もろくに折れないんですもの。まだまだ鍛えないとね。」
今、何て言った?骨を折った事が素晴らしいとか、神田龍勇が骨を折れないからどうとか。それも非常に気になる。
だが、『息子の龍勇』って?
息子?あれ、息子って誰の…。
「お、何だよ。この子超可愛いじゃん。タイプかもしんねぇ。」
「おいおい。歩美ちゃんが目当てじゃねぇのかよ。」
「うるせぇな。そんな見た目ばっかのゴリラより、こっちのがいいわ。」
ゴリラ呼びには腹が立つ。私が選ばれない事も。
だがそれよりも、目の前の女子が危ない!
私より背も低いし、体も華奢だ。1発でも殴られれば、それこそ骨1本では済まされない。2人の間に入ろうとしたら、残りの奴等に両腕を掴まれた。藻掻こうにも、筋肉量の違いから簡単にはいかない。
「なぁなぁ、俺と付き合ってくんね?一目惚れしちゃったんだよな。」
「ふふ、駄目よ。私もう相手がいるもの。」
こんな時に、まだ笑っていられるって、精神力どうなってるの?
「そんな男よか、俺のがずっと楽しませてやれんぜ?」
「随分と自信あるのね。でも、やめた方がいいわ。私を楽しませるなんて大役、あの人以外出来ないから。」
「いいじゃねぇかよ。」
鬼頭の体が、一瞬上空に上がったかと思いきや、仰向けに地面に寝転がった。華奢な腕1本で男を投げ飛ばしたなんて、私並みの動体視力が無ければ、ただ鬼頭が転んだようにしか見えなかっただろう。
「ねぇ…言ってる意味が、わからない訳?オブラートに包みすぎた?ゴミ箱頭でもわかるように言うわ。あんたみたいなクソガキが、私の相手にならないから、さっさと消えろって言ってるのよ。」
先程までのほんわかした、可愛らしい笑顔や声が無い。冷ややかな無表情と、地を這うような低い声。そして見覚えのある、殺意でギラついた目。
「くそが!!!何しやがんだクソアマ!!」
「ああ、思ったよりも丈夫なのね。おつむが弱い分、耐久性にステ振りしたのかしら。」
「なっ…ぐーーーーーっっっ!!!」
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