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2:side N
真中との『友人関係』が『恋人関係』に変わったのは、19歳の時だ。
高校時代は、空いた時間でプレイの練習をする日々を過ごしていた。
卒業後、大学進学のため上京した俺たちは、家賃節約のため小さな2DKで同居。約束事も色々決めて、新しい生活をはじめた。
これは高校時代から変わらないことなのだが、真中は遊び癖がすごかった。毎日のように女の子と電話したり、デートしたり。だけど相手はコロコロと変わる。
一方、俺には浮いた話はひとつもなかった。
Subとしても未熟な俺は、真中以外の人間と過ごすことに自信がなくなっていた。だから逆に、真中さえいれば恋人なんて必要なかった。
真中は、定期的にプレイの練習に付き合ってくれる。暴力を振るわれることも多いが、それは本能的なものだろうと思っていた。
加虐的になってしまうのは、真中がDomであるから。
それが真中の素なのだ。
俺は出来損ないのSubだけど、コマンドもグレアも効かないけど、彼の暴力だけは受け止められる。
そんな風に想いが通じ合って、そしたら自然と身体を重ねていた。
どんな成り行きだったか、あまり覚えてないけれど……確か真中から誘ってきたと記憶している。
そうして俺たちは、身体を重ねた後、恋人関係になったのだった。
真中は、セックスだけは上手かった。初めての時は痛みに悶絶したけれど、今はもう痛みなんて感じない。
プレイよりも甘くて、気持ち良くて、とろけてしまいそうなセックスに、俺はどんどん溺れていった。
真中は俺を抱きながら「好きだよ、のえ」なんて甘い言葉を囁いてくる。
その言葉だけで、彼から受けた痛みは不思議と消えてしまうのだ。
だけどやっぱりプレイは苦手だった。
第二性の欲求を満たす為に必要な行為だから、仕方なくやっているけれど……真中の刺すようなグレアも、強いコマンドも、全く気持ちよくなれなくて。
欲求が満たされる、というよりは「義務を果たしている」みたいな、そんな行為を、いつまでも続けていた。
そうやって真中と付き合い続けて、あっという間にお酒も飲める年齢になった。真中はよく、大学の友達や先輩と飲みに行く。だから帰宅時間はバラバラな生活をしていた。
その日も、真中の帰宅が遅かった。日付が変わる頃に帰ってきて、「のえー、おみやげー」と言ってなにやら袋をこちらへ差し出す。そんな真中は、いつにも増して上機嫌だった。きっと楽しい酒の席だったのだろう。
もう就寝の準備をしていた俺は、少々面倒に感じながらもその袋を受け取り、開封した。
「……なんだ、これ?」
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