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ナポリタン
いつぶりだろう?
彼女が連れてきてくれなかったら
この味を忘れるところだった
"ナポリタン"は
こんなにも美味しいなんて
…
田舎に住んでいた
家の後ろはすぐ森だった
たまに獣たちが降りてきて
鉢合わせすることもあった
夜空は宝石のような星たち
手が届きそうなぐらい近くにあった
学生の時だった
喫茶店でバイトをしていたのは
畑ばかりのところから
少し離れた場所にあった
そこは
おじさまとおばさまの
出逢いの場所だった
ほとんど常連さんだが
からんからん
白髪の男性が入ってきた
長すぎず短すぎずまとまりがあり
綺麗に手入れされているようだ
綺麗な茶色のジャケット
よくみるとチェックがはいっていた
靴下はマスタード
絶妙な色だった
ちょうどいい大きさのセカンドバック
使い古したであろう跡があった
"ホットで"
そう言うと
奥にある日の当たる席に座った
ソファーは赤にすこし緑を混ぜた
深みのある色だった
よくみると少し破れているところがあり
この店の歴史を感じさせてくれた
"今日はまたスズさんと待ち合わせですか?"
"そうだよ、スズさん誕生日なんだ"
彼は笑って話してくれた
わたしは働きながら
いつもみんなの若い頃を想像した
このご老人は
モテたんだろうなあと思っていた
いつもスズさんと
楽しそうに話している姿をみていた
珈琲は一杯では足りず
何度もおかわりして時間を共にしていた
恐らく話が面白くて
彼女を飽きさせないのだと思った
からんからん
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