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「赤いランカンの橋をわたってすぐよ」
ママのさいごの言葉が耳に残っていた。
わたしのパパが運転するワンボックスカーがソコにさしかかったとき思い出したわ。
「お父さん、いつお迎えに来てくれるの?」
わたしは後部座席から体をおおきくのりだして、小さな声で訊いた。
「うーん、お仕事がなんとか終わったらな。さいあく夏休みいっぱいはここで暮らすことになるかもな。でも……話したとおり、パパの知り合いもいるから大丈夫だよ。何かあったらすぐにスマホで連絡しておいで」
「うん……」
「その時はすぐに駆けつけるから」
運転しながら一気にまくしたてるパパ。
「……わかった」
わたしは、大好きなうさぎのお人形をぎゅっとだきしめる。きっとすぐに来てくれる。
ほんの少しのあいだの田舎生活だわ。
でもここって、どこを見たって、畑!
田んぼ、畑。田んぼ!!
山と葉っぱと水の音。
【注意!!】
……ってシカとイノシシの絵が描かれたカンバンがすんごい田舎感を引き出してるわ。
アメージングね。
いままで見たことなかったわこんなの。
例えるならこうよ、ひと夏の田舎体験たまわります、カッコ、都会の子限定ってね。
大都会から来たお嬢様のわたしが何日もここにいてあげるんだから感謝しなさいよ。
ふん。
わたしは本気でそう思ってた。
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