石田さんち

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だって、わたしのおうちではイヌも飼ってたのよ。ミニチュアダックスっていう小さな子で、名前はチョコちゃん。 ネコも本当は欲しかったんだけど、ママがアレルギーになるからって言ったからあきらめてたんだ。 だから、いしださんちでエイトに会えてうれしい! 「いいことだよ。若い子が生き物に愛情をそそぐのはねえ」 おばあちゃんが言った。 「そうだな。コータローなんて追いかけてきらわれてるもんなあ」 「そうね、コータローにも見習って欲しいわ。アリサちゃんのそういうところ」 ん? コータローってだれだろ? 「あの、コータローってなんのことですか?」 わたしはきいてみた。 「うん、この夏休みになったら毎年ここに来てイソウロウする男の子だよ。川田幸太郎って言うんだ……アリサちゃんよりちょっと年上になるのかなあ」 おじさんはそう言って、台所のほうからかつおぶしをもってきてネコ用のうつわにいれた。とたんにわたしのおひざからおりて、エイトはそっちに行っちゃった。 「その男の子は今年もくるんですか?」 「そうだよ。たぶん、今日か明日あたりだとおもうよ。アリサちゃんと仲良くできたらいいなあ」 「コータローはなんだかんだで優しいからきっと仲良くなれると思うわよ」 おばさんはそう言って、マスカットを、1粒お口に入れた。 「あら、ほんとおいしい!」 「うん! そのぶどう大好きです」 「よかったわ。ブドウ畑してる山下さんにもお礼言っておくわね」
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