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車の中のビージーエムは、90年代の映画音楽みたい。
これ、なんていったかしら?
ママが好きだった曲よ、たしか。
あ!
思い出した!
これって船が沈没しちゃうやつだ!
沈んじゃってヒロインと恋人が引き離される悲しいお話だわ。
あんまりわたしの趣味じゃないけど……。
アンハッピーで、ちょっとむねがチクってなる。
わたしは、ノースリーブの淡いブルーのワンピースの裾をぎゅってつまんだ。
ひらひらじゃないドッキングワンピース。
これはわたしのお気に入りの一枚だった。
子供だからって、ひらひらなのは嫌いよ。
このワンピースは、フレアになってるところがお気に入りなの。
わたしが、肩の力をおとして白のシューズに目をむけた時だった。
「ここだよ」
パパが言った。
ろくに舗装もされてないガタガタ道がとっても長く続いた先には、ポツンと和風のおうちが建っていたの。
こんなところにほんとうに人が住んでるのね。
わたしはパパと一緒に、停まった車からおりた。
真横には川がずっとたえまなく遠いところまで続いてて、こんな真夏でも涼しさを感じたわ。さわさわと川をはさんで向かい側のおおきな木々が風でゆれている。
大きく深呼吸した。
わたしの住むところとはちがう匂いがする。
土、葉っぱ、水のにおい。
「ここが、パパのお友達のおうちだよ。名前は石田さん。きちんとあいさつするんだぞ」
わかってるわ。
わたしとパパは石垣にそって玄関の方へまわった。
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