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石田さんち
おうちに入るとひんやりとした空気をわたしのうでに感じた。よそのおうちのにおいと、知らないクツがたくさんならんでる。大きなクツばかりだった。
「あ〜ら〜。来てくれたのかしら? 」
女の人の声がして、水色のエプロン姿の人が玄関に来てくれたの。わたしはにっこり笑ってあいさつをした。
「こんにちは。水島 有咲です」
「かわいらしいお嬢さんねえ! こんにちは。わたしは石田景子。このおじさんの奥さんよ」
すごく元気よくあいさつしてくれて、すぐに陽気な女性なんだなってわかった。
「おせわになります」
「いやー、都会の子ってしっかりしてるわねぇ」
さっきのおじさんと同じことを言ってる。
わたしはくすっと笑ったの。
「あら、ほんとにかわいらしいわっ! ねえ、あの子役のなんとかっていうのに似てない? 」
「お前、玄関でそんなどうでもええ話はやめろい。早く中へ通してやってくれ。遠くから来たんだから」
「あら、そうねえ。ごめんね、アリサちゃん。はいってちょうだいな」
「失礼します」
わたしは大きな声でしっかりと言った。
クツを脱いでいると、おばさんはずっとこちらを見てた。そんなにめずらしいのかしら?
わたしのこと。
「ね、中でお菓子でも食べてゆっくりしなさいよ。アリサちゃんは、ぶどうとりんごどっちが好き? 」
「ぶどうが好きです」
ジュースのことかな?
わたしはさっきからのどがかわいてたことに気がついた。きんちょうしてたからかな。
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