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菜穂子の珈琲時間
朝起きて、ぼさぼさ髪にパジャマ姿でカーテンを開ける。
太陽の光が、菜穂子の体にぐんぐん吸収されていく。
「今日はどれにしよう」
お湯を沸かしながら、菜穂子は〈本日の珈琲〉を楽しそうに選ぶ。
おうち時間が増えてから始めた、菜穂子の楽しみのひとつ。
コーヒータイム。
菜穂子は去年の春から在宅ワークをしている。
もともとは、そのころ「生活リズムを崩さないように」と、始めたことだった。
今ではすっかり趣味のような、楽しみの時間になっている。
菜穂子がこの試みをあちらこちらで発信するから、去年の誕生日やお中元。クリスマスプレゼントにお歳暮は、コーヒー関連が多かった。
菜穂子はそれらが届くと、誰もいない部屋でバンザイして喜んだ。
部屋の隅の白いカラーボックス。そこが菜穂子の珈琲時間コーナー。
そこには、常に何種類かのドリップパックがストックされていて、そこから気分で好きなものを選ぶ。
もちろんそれだけでなく、豆もある。
頂き物の、豆を挽いてもらってパッキングした香りの良いものは、丁寧にハンドドリップする。
サイフォンは持っていないけれど、代わりに、ハンドドリップする紙とプラスチックの三角のやつがあるから大丈夫。
ちょっと贅沢したいときは、それを使う。
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