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坂道を登り切ったから、手を放すのかと思ったら、サトダさんは私の手を繋いだままだ。
今日は、ちゃんとデートするらしい。
ちょっと気になって、ふざけて
「サトダさん。社内の子とデートしないんじゃなかったですか?」
と聞いてみる。
サトダさんがこっちを見て、すこし考えている。
「真面目に付き合うつもりもないのに、社内で遊んでたらマズイでしょ?」
それは、知っている。
美和さんとのことがはっきりしたから、考えが変わったのだろうか。
「こないだ話した、その通り。もういいかって思えたから」
「はい」
あの時、美和さんとのことは、ちゃんとしっかり話してくれた。サトダさんは、もう自由なんだな。
サトダさんがじっと私の目を見た。
「杏ちゃん、こないだ、どうして秘書課に異動させるのか?って聞いたよね。離れていいのかって」
私の適正だとか、人材育成的な理由は聞いた。
でも、離れて、サトダさん自身がどう思うのかは聞いてない。
手をつないでくれるくらいだから、寂しいとおもってくれるのだろうか。
「はい。聞きました」
答えを聞くのが少し怖い。
繋いでくれている手をぎゅうっと握る。
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