11/34

1748人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
私がちょっと緊張して、手を強く握ったのを感じたらしく、サトダさんはふっと笑う。 「ちゃんと付き合うんなら、社内恋愛も別に良いと思うんだけど、さすがに直属の部下の手なんか、握られないから」 え? 「俺は杏ちゃんと、こういう事したくて、異動の話、勧めた」 と言って、繋いだ手を上げてみせた。 いたずらを告白する子どものように照れているように見える。 「もちろん、俺の下にいるより、秘書課が合ってると思っているからだけど」 となんだか言い訳のように続けた。 「はい?」 私の思考回路が付いていかない。 サトダさんが少し困って笑っている。 サトダさんがもう、社内の子とデートしないみたいな、そういう縛りはやめたというのはわかる。 で、私と今、デートしている。 でも、直属の部下だったら、デートできない、らしい。 ちょっとわかってきた。 サトダさんがじっとこっちを見ている。 「杏ちゃんと、ちゃんと付き合いたい」 「え?」 普段、適当な返事はしないようにしているのに、思わず出てしまった。 私、さっきから、思考が停止している。 「あ、はい!」 慌てて、まず返事を言っておく。 お付き合いできるなら、したい。 私は、サトダさんが好きだもの。 「え?」 と、逆に聞き返された。 あぁ、どうしよう。 ちょっと混乱している。 「サトダさん、私の事、好きなんですか?」 思い切って、聞いてみた。 そういうことなの?
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1748人が本棚に入れています
本棚に追加