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私がちょっと緊張して、手を強く握ったのを感じたらしく、サトダさんはふっと笑う。
「ちゃんと付き合うんなら、社内恋愛も別に良いと思うんだけど、さすがに直属の部下の手なんか、握られないから」
え?
「俺は杏ちゃんと、こういう事したくて、異動の話、勧めた」
と言って、繋いだ手を上げてみせた。
いたずらを告白する子どものように照れているように見える。
「もちろん、俺の下にいるより、秘書課が合ってると思っているからだけど」
となんだか言い訳のように続けた。
「はい?」
私の思考回路が付いていかない。
サトダさんが少し困って笑っている。
サトダさんがもう、社内の子とデートしないみたいな、そういう縛りはやめたというのはわかる。
で、私と今、デートしている。
でも、直属の部下だったら、デートできない、らしい。
ちょっとわかってきた。
サトダさんがじっとこっちを見ている。
「杏ちゃんと、ちゃんと付き合いたい」
「え?」
普段、適当な返事はしないようにしているのに、思わず出てしまった。
私、さっきから、思考が停止している。
「あ、はい!」
慌てて、まず返事を言っておく。
お付き合いできるなら、したい。
私は、サトダさんが好きだもの。
「え?」
と、逆に聞き返された。
あぁ、どうしよう。
ちょっと混乱している。
「サトダさん、私の事、好きなんですか?」
思い切って、聞いてみた。
そういうことなの?
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