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「兄に会ったのも、そういう事ですか?」
ちょっとびっくりした。
エルマーのお礼を言うと言っていた。
「挨拶っていうか、杏ちゃん、お兄さんの事、気にしていたから。会ったら早いかなぁと思って。エルマーのおかげで色々、頑張れたし」
そうかぁ。
確かに、サトダさんに兄を会わせて、私の持つ変な不安は、消えて行った。
「ありがとうございます」
なんかうれしくなった。
「ん。こちらこそ、ありがと。……なんか、杏ちゃんの話し方とか、いろいろ分かったし」
「なんですか?」
「杏ちゃん、割とゆっくり話すし、話した後、ちゃんと間を取るだろ。間を埋めようとしないし。あと、ちゃんと聞こうとする」
そういう癖のことか。
「多分、子供のころからの癖ですね」
兄に話すとき、一度何か言ったら反応がなくても10秒待つように言われて育った。
兄の言葉は、なぜか母よりも私が一番よく分かったから、兄の言葉をなるべくくみ取ろうとして、聞いた言葉を考えるようにもなった。
「俺、杏ちゃんの話し方、好きだわ」
兄との暮らしで私に身に着いた、沁みついたこと。
良いことも悪いことも、色々あるけれど、これは一番うれしかった。
「それは、嬉しいです」
私も、サトダさんが、私に敬語じゃなく、気軽に話してくれるのがとても好きだ。
「私もサトダさんが今みたいに普通に話してくれるの、とても好きです」
「ん。もう彼女だから。杏ちゃんだから、特別だよ、色々」
ははっと笑って、コーヒーを飲みほした。
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