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まだ冷たいフラペチーノを片手に、車に戻る。 まだ初夏なのに、駐車場に置いた車はすぐに暑くなる。温かくなった車内に風を通そうと窓を開けた。 突風が通って、髪の毛が少し乱れた。 サトダさんの腕が伸びる。 そっと髪の毛を直してくれた。 それだけ。 それだけで心臓に良くない。 「暑いから、出すわ」 サトダさんが車のエンジンをかけて、車を動かす。 エアコンがすぐに効いて、窓を閉めた。 駄目だ。 なんか私、壊れた。 さっき手を繋いで、ちょっと抱きしめられただけで、すごく、すごくドキドキしている。 さっきまで、普通に格好良いな、素敵だなと思っていたサトダさんの運転する姿も、さっきその腕に抱きしめられたと思うと、なんか私の中で度を越してしまった。 駐車場で、切り返しのギアチェンジしたのをみて、おかしくなってきちゃった。 ふふふっ 笑いがとまらない。 「何?」 サトダさんが驚いている。 駄目だ。もうー。 ふふふ。 ニヤニヤが止まらない。 「杏?」 サトダさんが私を呼び捨てにする。 もうダメ。 溶ける。 「だめです。笑っちゃう」 サトダさんが駐車場を出ながら、首を少しかしげているようだ。 変に思われるよりは、と思って説明する。 「ふふふ。サトダさんが素敵すぎて、私、だめです。可笑しい」 クスクス笑いがとまらないし、ずっと、頬が熱い。 ほっぺが溶けてしまいそう。 「え?」 チラッと私を見て、視線を車道に戻す。 「危ないわ。杏ちゃん、後にして」 左右確認して車を車道に出すと、 「なんで俺、山に来ちゃったかな」 と言いながら、サトダさんが、くねった森林道をドライブした。
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