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市街地に帰ると、夕方まだ早いけど、レストランにつれて行ってくれた。 お洒落なイタリアンで、行ってみたいと思っていた場所だった。 「俺、車だから、ノンアルにするけど、杏は飲んで良いから。送るし」 そういってもらって、ハウスワインの白をグラスでもらう。 ノンアルコールのビールとグラスワインが来て、 「いただきます」 と小さく乾杯した。 外を歩いたりしたから、冷えたワインが心地良かった。 サトダさんがぐっとビールを飲む。 そういうのもいちいち素敵だと思うから、本当に私はどうかしてしまった。 またニヤけてしまう。 恥ずかしい。 「何? 杏」 サトダさんがこっちを見る。 優しい目だ。 変なニヤけを一生懸命抑える。 「サトダさんと一緒で楽しいなぁと思って」 「ん。俺も楽しい」 ははっと笑った。 「なぁ? 俺、杏ちゃんの事、杏で良い?」 今になって、気が付いたらしく、聞いてくれた。 もう今日、何回もそう呼んでくれているのに。 「はい。いいですよ。嬉しいです」 言いながら、またニヤけてしまった。 サトダさんに「杏ちゃん」と呼ばれるのも嬉しいし、「杏」だけもとても嬉しい。 ドキドキして、舞い上がってしまうほど。 「じゃあさ、俺は?」 サトダさんが、少し誂うようにみてくる。
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