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「大さん」 サトダさんの目を見て、さん付けで呼んでみる。 駄目だ。 さん付けでも、もう口が・・・。 へらへらしてしまう口を押えても、なんか笑えちゃう。 「そんなにおかしい?」 サトダさんも笑っている。 「ダメなんです。ニヤニヤしちゃう。なんだか恥ずかしいから」 と正直に言った。 私が一人で馬鹿みたいに照れていたら、「杏」とサトダさんに呼ばれた。 テーブルに軽く肘をついて、こっちを見ている。 空いている手を私に伸ばして、テーブルの上で、私の指先を軽く握った。 「はい」 甘い目で見られて、どうしていいのかわからずに返事をする。 サトダさんが少し、私の指先をいじっている。 サトダさんの大きな手が私の指を触る。 それだけで、クラクラする。 「私。酔っていますね」 照れ隠しに少し笑う。 「そう?」 低い声でそれだけ言った。 レストランなのに、指先を離してくれない。 「はい」 目も外してくれない。 捉われている。 この人に捉えられていると、身体の奥が燃える。 「可愛いな」 ふっと笑って、手を離してくれた。 ウェイターさんがお皿を持ってくる。 私は耳まで熱い。
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