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サトダさんがそっと手を伸ばして、頬に添えたと思ったら、口づけられた。 軽い、優しいキス。 おへその奥がきゅーっとする。 鼓動が一段と早くなる。 サトダさんが、ふっと軽く笑うから、私も笑ったら、もう一度口づけられた。 少しだけ深く、長く。 唇が混ざって、溶ける。 ぼうっとしたら、そっと体を離された。 「後は取っときます」 なんだか一人で宣言して笑っている。 「杏。来週末、大丈夫?」 「はい。金曜日、課の皆さんが送別会してくれるって聞いてますけど」 課の皆さんが、異動の送別会をしてくれることになっている。 サトダさんも呼ばれているはずだ。 「ん、そう。俺、水、木、東京だから、金曜日は参加するし、送別会の後、一緒に帰ろう」 「はい」 予定ができるっていうのは、うれしいことだ。 もちろん、サトダさんは忙しいから、予定は変更することも多いのは心得ているつもりだけど。 車から降りて、マンションの玄関に入るまで送ってくれた。 子供のころ以来、マンションの廊下をスキップしそうになる。
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