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タクシーに私をのせると、サトダさんは隣で、私の知らない住所を言うと、私の手を握った。
「楽しかった?」
「はい」
「それは、良かった」
きゅっと手を握る。
温かい、大きな手。
心臓が跳ねている。
タクシーのワイパーが動き出して、小雨が降り始めているのに気が付く。
タクシーを降りると、雨をよけて、手をつないだまま小走りでエントランスへ入った。
そのまま花束を持っていない方の手を引かれていく。
エレベーターで、階数を押して、ドアが閉まると、サトダさんがへらっと笑った。
こっちを見る目が楽しそうに揺らぐ。
それだけで、身体の芯が震える。
あまりに鼓動が早くって、息が苦しくなってきた。
サトダさんは繋いだ手を持ち上げると、私の手の甲に口をつけた。
目が離せない。
私がこんなにドキドキしているのに、サトダさんは、ただただ楽しそうだ。
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