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「入って」
と、言われて、部屋に入ると、カーテンを開けっぱなしの大きな窓に雨が降っていた。
私の部屋より、ずいぶん広い。
家族用のマンションなのかもしれない。
「すみません。お花、何かに入れて良いですか?」
「ん。コレは?」
大きなビールジョッキを出してくれた。
お花を入れさせてもらって、テーブルに置いた。
サトダさんがジャケットを脱いで、ネクタイを取っている。
姿を見つめると緊張してしまうので、窓際へ寄って外の雨を見ていたら、後ろから抱きしめられた。
「早く帰ってきて、良かった」
「そうですね。雨の予報、見てなかったです。よかった」
「俺はただ杏と早く二人になりたかっただけだけど」
そんなことを言われたら、お腹がキュウっとしちゃうのに、サトダさんの顔は見えない。
からかっているのか、真剣なのか、顔が見たくってサトダさんの腕の中でクルリと向きを変えて見上げると、サトダさんは優しく笑っていた。
「杏」
低い声で名前を呼ばれた。
それだけでサトダさんは私を捉えている。
「はい」
返事をする声が震えてしまいそうだ。
「大丈夫?」
軽く首をかしげて、私の様子をうかがっている。
「はい。大丈夫です。ドキドキしているだけ」
心配されても仕方がない。サトダさんに見つめられて、心臓が跳ねて仕方がないだけなんだから。
「ははは。可愛いな」
と、言うとチュっとキスをした。
軽いキスかと思ったのに、繰り返すキスがすぐに深くなった。
抱きしめられていなかったら、立っていられない。
苦しくなって、肩で息をして、どうしようもなくなって首を振ってサトダさんの胸に顔をうずめた。
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