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「サトダさん、社内の女の子とは、飲みにいかないんですか?」
普段、ほとんど仕事の事しか話していない、二ノ宮さんからそんなことを言われるとは思わなかった。
「え、あー。そうですね」
なるべくあいまいに濁す。
社内の女の子とどうこうなりたいと思っていない。
県内随一と言われるこの会社に勤める女の子たちは、社内恋愛からの結婚を目指している子が多そうだと勝手に思っている。
俺は、一応、社内でエリートだ、将来有望だ、とか言われている。
結婚なんか興味がないのに、社内の子に手をだしたら、ひどいことになりそうだと、それだけは絶対避けている。
遊ぶのは、適当に出会った、その辺のかわいい子でいい。
二ノ宮さんはこっちを見て、次の言葉を待っている。
間を恐れずに待っているから、逃げられない。
「うちの社は、皆さん、良いお嬢さんたちだから。俺なんかが誘っちゃダメでしょう?」
オブラートを何重にも重ねて、やんわり言葉を返す。
少し言われたことを考えているようだ。
会話の一瞬の間を埋めてこない。
「重いってことですか?」
せっかく包んだオブラートを全部剥いで、床に捨てられた……。
別にそうはっきり言ってない。
誤魔化したら、二ノ宮さんが少し笑って、
「軽いような人のほうが、重いものかかえてたりしませんか?」
と言った。
はっとした。
心臓をつかまれる。
この子は何を考えているのか。
見透かされているのかもしれない。
「でたらめなこと言ってすみません」
笑って話を切り上げようとするので、ありがたくそれに便乗する。
「二ノ宮さん、珍しく酔ってますね」
ははっと笑って誤魔化した。
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