二ノ宮さん

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 空港近くの小さなビジネスホテルの窓からは、ビルの屋上の赤いライトがいくつも見えた。 明日、着いたらミーティングが2件。 もうメールでアジェンダが送られて来ていた。 こちらから話すべき事を数点、頭の中でまとめる。 昨日、電話口で言われた数字が思い出せない。20k~25kだったと思うのだけど、記憶が確かじゃない。 オフィスに誰か残っていれば、メモ書きが机の上に貼ったままになっているはずだ。 事業部のデスクにかけると、二ノ宮さんが出た。 まだ残業していたらしい。 夜、一人の空間で彼女の声が耳に響くのは良くない。 メモ書きの数字を探してもらうと、丁寧にメモを写メで送ると言ってくれる。 そう言いながら、ふふっと笑う彼女の声が耳をくすぐった。 「何?」 あのメモに何か変な事が書いてあっただろうか。 「落書きがあったので。何でもないです」 何を書いたか、さっぱり覚えていない。 変なことを書いてないといいけども。 思い出そうとしていると、二ノ宮さんが 「明日、飛行機、早いんですよね? まだお仕事ですか?」 と聞いてきた。 明日は結構早いが、もう空港付近のホテルだから、問題ない。 「いや、もうホテルです。考えごとしてたら、メモのこと思い出して」 と、電話の理由を告げた。 「そうですか。あんまり働いてないで、寝てください」 優しい声が耳に響く。 二ノ宮さんが微笑んでいる気がする。 彼女のデスクに座って、受話器に当てた首をすこしかしげている。 そんなことまで想像した。 「ははは。うれしいな。心配してもらって」 なんとなく正直に口に出していた。
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