二ノ宮さん

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 十時過ぎに電話をすると、彼女の声が、聴こえた。 ただエルマーのはじめの章を呼んでもらった。 子供の本の一章なんて、短い。 ベットの上にホテルの枕を背にして、寝そべって、ただ携帯のスピーカーから聴こえる彼女の声を聴いている。 まるでいつも朗読をしているかのようにスムーズにエルマーを読んでいく。 そういえば、竜の前にねこが出てくる話だった。 しかも、父親の話、だったというのも、小学校以来忘れていた。 彼女の声を聴きながら、寝落ちなんかできるわけなくって、ただ適当に思いついたことを二ノ宮さんに言ってみる。 ふふっと笑う声が耳に届いて、自分のやっていることに、ドキリとする。 夜中に気になる女性に電話をかけて、ただ本を読んでもらう。 可笑しなことを始めてしまった。 ずっと声を聴いていたいと思い始める前に、電話を切った。
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