1748人が本棚に入れています
本棚に追加
/208ページ
十時過ぎに電話をすると、彼女の声が、聴こえた。
ただエルマーのはじめの章を呼んでもらった。
子供の本の一章なんて、短い。
ベットの上にホテルの枕を背にして、寝そべって、ただ携帯のスピーカーから聴こえる彼女の声を聴いている。
まるでいつも朗読をしているかのようにスムーズにエルマーを読んでいく。
そういえば、竜の前にねこが出てくる話だった。
しかも、父親の話、だったというのも、小学校以来忘れていた。
彼女の声を聴きながら、寝落ちなんかできるわけなくって、ただ適当に思いついたことを二ノ宮さんに言ってみる。
ふふっと笑う声が耳に届いて、自分のやっていることに、ドキリとする。
夜中に気になる女性に電話をかけて、ただ本を読んでもらう。
可笑しなことを始めてしまった。
ずっと声を聴いていたいと思い始める前に、電話を切った。
最初のコメントを投稿しよう!