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本社勤務の時には、二ノ宮さんとこの話をすることはないし、夜、電話もしない。
ただ、出張の夜、早く帰れたら泊っているホテルから電話をする。
自宅から電話をかけて、自分がふらっと変なことを言い出さない自信がないから、遠く離れている出張の時だけ。
二ノ宮さんも市内で一人暮らしていると聞いている。タクシーを飛ばせばすぐの距離に彼女がいる時に、夜中に電話したら、自分の感覚がおかしくなるんじゃないかと思う。
危ないから、近づかない。
遠く、離れている時に、子供のお話をすこしだけ。
その少しが、充分すぎるくらいに、響く。
寝かしつけようとしてくれているのに、いつも起きていては失礼だろうと、時々寝たふりをしている。
そうすると、そっと二ノ宮さんが息をひそめて、携帯を切る。
その瞬間が好きだ。
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