二ノ宮さん

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 二ノ宮さんは、会社では相変わらず、丁寧に仕事をしてくれている。 今日も、取引先の専務の長話に付き合わされているようだったから、代わって電話を切った。 二ノ宮さんを電話で困らせるのは、俺だけでいい。 ついでに、その後、社食に行ったら総務の杉浦にも声をかけられていた。 俺の名前が出ていたのを良いことに、話しかけた。 「こないだの杉浦さんへの書類を用意したのは、サトダさんって話です」 何の話か聞いた俺に振り向いて二ノ宮さんがそう説明しながら、腰を上げた。 「ここ、お座りになられます?私はもう、お先にいただきましたから」 「ありがと。悪いんだけど、二ノ宮さん、午後の会議の書類、メールしてあるから、コピー、人数分いい?」 お仕事を頼んで、二ノ宮さんをデスクに帰す。 杉浦に話しかけながら、携帯から後で自分でプリントするつもりだった書類を一枚、クラウドのフォルダから添付してメールした。 あとで、盛田さんが言うには、俺が邪魔をして「杉浦君が可愛そう」だったらしい。 あいつはモテるんだから、かわいそうでもなんでもない。 可愛そうだったのは、俺の仕事を言いつけて昼休みが短くなった二ノ宮さんで、お詫びに、紅茶を買って行った。
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