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元々、俺が居ないときに限って、二ノ宮さんに近づこうとする奴らがいけない。
営業のサトケンですら、俺が居ないとわかっているくせに、うちの課に来て二ノ宮さんに何か質問していったらしい。後で二ノ宮さんに聞かれて、二ノ宮さんは、わざわざサトケンに返事をしに行っていた。
普段はデスクで向かい合っているから、出張じゃない限り、二ノ宮さんの所に来る男は、長話したり、口説いていないかチェックしている。
そんな風にお互い近い距離で仕事をしていても、彼女は、一切、この変な遊びの事には、触れてこない。
自分からも、なんとなく会社でこの事には触れられないでいる。
お互い、何でもなかったように、仕事している。
それが益々、この遊びに可笑しな要素を足している気がする。
すこし、二人だけの秘密を抱えた気分になって、愉しい。
俺が愉しいからって、どうしようもないのだけど。
本の中でエルマーが小さな竜を自由にするため、変な冒険をしている。
二ノ宮さんと、この変な遊びをして、いつか俺は自由になれるだろうか。
自分で作った枷に嵌まって、動けないでいる。
誰のせいでもなく、自分で作った枷だけれど。
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