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週末のそれほど遅くない時間を見計らって、美和に電話した。
繋がらない可能性だってあったのに、4コールで昔から聞き慣れた声がする。
久しぶり、というと、「先週、病院であったね」と返された。
「ん。美和、病院ってどうしたかな? と思って」
彼女が、彼女の住まいから近くないはずの県立病院にいた理由を聞いてみる。
具合が悪いんだろうか。
それとも、ご家族の調子が悪いのか。
「えーっと。大丈夫」
「大丈夫なやつは、病院に行かないだろ?」
「そうだけど。大ちゃんはお見舞いだったんでしょ?」
話を切り替えようとする。
俺に話したくないんだったら、別にいいけれど。
「ん。そう」
俺が少し不機嫌な声になったのか、美和がとりなすように続けた。
「私、元気だから。大丈夫」
「あ、そう。じゃいいけど。旦那も元気?」
「うん。お陰様で」
じゃぁ、何だ?
詮索を止めたつもりが、自分の本題を持ち出す勇気が少し足りずに、中々、進まない。
電話じゃ、無理だ。
「美和。本当に大丈夫? 俺、少し話したいんだけど、ちょっと出れる?」
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