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車を飛ばして、一時間程。
美和に言われたカフェにいくともう美和がテーブルについていた。
「なんか、急に悪いな」
「え?何よ?」と気楽にしてる。
なんと説明していいか分からない。自分の気持ちの問題だから。
でも、主婦をいきなり呼び出して、だらだら世間話をするのも悪い。
「あのさ、美和。俺、美和がずっと幸せで、いてくれないと、ダメなんだ」
「大ちゃん、何それ?」
目を丸くしてる。かなり、びっくりさせたらしい。そして俺の突拍子もないセリフに半笑いになった。
「いきなり変なこと言った。おかしいこと言うけど聞いて。今までずっと、俺、美和に子供ができるまでは、ずっと独身で待ってようって勝手に決めてた」
美和が驚いて、目を見開いて、凍っている。
誰にもはっきり言った事なんかない。
「美和、子供欲しいって言ってたけど、まだじゃん? もし、それで、それが、原因で旦那と上手いこと行かなくなったりしたら、俺が責任取ろうって」
「え? 責任って?」
「あん時、俺の子、諦めたのが原因で、もし子供が出来にくいとかだったら、俺のせいだし」
カフェの客の手前、声を押さえて、言った。
「え。……別に諦めてないよ」
まだ驚いたように俺を見ている。
少しうつむくと、ゆっくり「あの時もダメだったの」と静かに言った。
ふうっと息をはくと、落ち着いた声で続けた。
「あの時ね、検査薬では妊娠してて、検診ではっきりしたら、大ちゃんに連絡しようって思ってた。隠すつもりもなかったの。でもダメだった。心拍がないですって」
「あ、あぁ。そうだったんだ」
なんて言うべきなのか言葉が見つからない。
美和が酷く辛いときに、俺はそこに居なかった。
「ごめん」
ただ謝る。それしか出来ない。
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