美和

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「大ちゃんのせいじゃないよ。大ちゃん、知らなかったんだし。言わないでおこうと思ったのに、あの時、大ちゃんが私が適当に結婚したみたいな事言うから、ムカついて言っちゃった。大ちゃんが海外にいる間、色々あったんだよって、分かって欲しかったの」 「ん。でも、元々そうなったのは、男の責任だから」 ちゃんとしてたら、海外赴任の前に元カノを妊娠させたりしない。 あの頃、美和なら、子供ができたらいつでも結婚する気でいたんだと思う。 「妊娠? ……それも大ちゃんのせいじゃないじゃない」 声を落として、困ったように美和が、口を開く。 「大ちゃんに行って欲しくなくって、……別れたくなかったから。お別れの前の時に、絶対大丈夫な日だからって私、嘘ついた。私が頼んだの。覚えてないか。なんとなく、子供ができたらいいなぁって思ってたの」 そこまで想ってくれていたのに、海外赴任を取った。 置いていった。 「ごめん。俺、自分の事ばっかり考えてたから」 「うん。あの頃、頑張ってたもんね。大ちゃんがお仕事、頑張ってたの知ってたのに、わがままだった、私」 「いや、そういう事じゃないだろ。辛い思いさせて、ごめん」 美和が、少し微笑んだ。 「あれ、大ちゃん、なんか前より、優しくなった?」と揶揄う。
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