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「大ちゃん、もう全部、昔のことだよ。私に子供が居なくても、大ちゃんに責任なんて無いよ。……大ちゃん、前も言ったけど、大ちゃんがいない時に隆さんに会って、結婚したからって、隆さん、2番目じゃないよ」
これは前にも言われた。
何度も言われるなんて、情けない。苦笑いしてしまう。
「ふふ。大ちゃんがあの時、日本にいたら、私にこっぴどく振られていたところだよ」
美和がクスクス笑う。
「そっか」
「あのね、私、こないだの病院、婦人科に行ったの。通ってるの」
美和がちょっとゆっくり言葉を選んでいるように話す。
「大ちゃんとの時も、ダメだったのは、多分私の体質なのね。だから、ここ一年、通ってちょっと本格的に頑張ってみてるとこ」
「そうかぁ。ごめん、色々詮索して」
「良いよ。心配させちゃったね」
いつも美和はこうして、良いよ、という。昔からずっと俺のわがままも、良いよって。
旦那にはちゃんと、嫌だ、駄目だ、ってわがまま言えるんだろうか。
美和が、ふわりと笑う。
「でもね、隆さんともう話してるの。赤ちゃんが来なくても、きっと二人で楽しいからって。まだ諦めてないけど、もし、ずっと無理でも二人で、大丈夫だから」
「まぁ、隆さん、次男だしね。お義父さん達も良い人達だし。大丈夫」
ちょっとふざけるように付け足して笑った。
俺が知らない間に、美和は別の人と、その人の家族に囲まれてしっかり、生きている。
「そっか。良かった」
安心した。
そして、もっと早くに美和と向き合えば、俺も生き方が違っていたかもなと思った。
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