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「うん。で? 大ちゃん、何?」
美和が誂うように、楽しそうにこっちを窺っている。
「え?」
「話。話、ちょっとズレましたけど、今日は何か他の事言おうとしてたよね?」
「あ、それは解決した」
元々責任なんか無い、取らないでいい、と言われたら、それだけで終わりだ。
今さら、責任取るつもりだったけど、そういかなくなりそうだ、許して下さい、なんて言っても意味がない。
「ふーん」
ハーブティーを飲むと、こっちをじっと見ている。
「本気の好きな人、できたんだ?」
あ。
コーヒーカップを落としそうになる。
え?
美和はおっとりしているくせに、こういう事に、鋭い。
「だって、そういう事だよね? 責任取って、私に子供が出来るまで、待っていようと思っていました。しかし! っていう話を今日は、しにきた感じだったよね?」
「あー」
誤魔化していると、面白そうに詮索を続ける。
「しかし、好きな子が出来たので、この勝手に決めていた、責任を放棄してしまうけど、ゴメンね? 」
美和が首をかしげて、俺のセリフの予想をして、ごめんねポーズで完全に誂っている。
「なんじゃそりゃ」
自分のセリフに自分で突っ込んで、美和が笑う。
「あぁ。まぁ、そんなとこ」
投げやりに言うと、美和はまだクスクス笑っている。
ニコニコしたまま、「どんな人?」と聞いてくる。
ゴシップを聞き出したいという顔だ。
やっと普通の女友だちになれるのかもしれない。
「会社の子」と短く言うと、美和がカップを持ちながら、「いいなぁ、社内恋愛!」と茶化した。
「まだ、そういうんじゃない」
なんで俺が美和にからかわれないといけないんだ。
「ウソ? 私と話つけてからって、決めてたの? 大ちゃん、律儀すぎない?」
あぁ、もう。うるさい。
何も言わずに睨んでやる。
「おばさんも葵ちゃんも、これでひと安心だね」
はははっと笑っている。
母も妹も俺が美和が出戻ってくるのを待っていると思っているから、まぁ、他の子とちゃんと上手くいったら安心するのかも知れない。
「色々、悪かったな。ありがと」
全部。
今までの事、全部含めて、お詫びと感謝を伝える。
「うん。私も。頑張ってね」
余裕の顔で励まされた。
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