宵のエルマー

杏ちゃん

　年度末の本格的な忙しさの始まる前に、もう一つ、毎年、ややこしい仕事がある。

ホワイトデー。

バレンタインには、海外事情部の女性が全体をまとめて、給湯室に大きめのチョコレートの箱をプレゼントしてくれる。
もうこういう習慣もなくなっていいと思うのだけど、一応、形式ばかりに続いている。
佐藤部長を煩わせるのも何なので、うちの課長が男性社員を取りまとめて、適当にケーキやビスケットを振舞ってお礼にする。

それはいいのだけど。

バレンタインデーには、昔ほどではないけれど、個人的にチョコレートを頂く。デスクに置いて行ってくれる人もいれば、社内で遭遇したときに手渡されることもある。

送り主がわかっているやつは、お礼をしないといけない。

毎年、均一に百貨店で、高級そうなお菓子を買って、ラッピングしてもらう。それをホワイトデーにお礼として渡す。
デスクにおいておけるのが一番いい。
メモ書きに「お礼です」と書いて、置いておく。
本人がいる場合も、仕事の邪魔にならない程度に、さっと渡して、去る。

もうお礼なんか良いだろうと思うけど、くれたのだから、仕方がない。

毎年の少しだけめんどくさいと思っている習慣。