杏ちゃん

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 今年も同じように、数名からバレンタインチョコを頂いた。 義理のようなのから、連絡先の書いてあるのまで。 きっちりとラッピングされた、おしゃれなチョコレートたちだった。 「おおー、今年も、サトダ、すごいな」 デスクに置かれたチョコ―トを見て、森本が茶化す。 「ああ、ありがたいっすねぇ」 適当な返事をして、デスクに着く。 名前がついているやつは、後で、携帯にメモっておかないといけない。忘れてしまう。 デスクに置きっぱなしもいけないだろうと、机から、いつかもらった紙袋を出して、片付けた。 いくつかのチョコレートの箱をどかしたら、その奥に、チロルチョコが十個くらい、小さな山になっていた。 名前も何もないけれど、さっと顔を上げて向かいの二ノ宮さんを見た。 俺より早くに来ていて、もうパソコンに向かっている。 きっと彼女だろう。 時々、コーヒーを入れてくれてチロルチョコを俺だけにぽんと置いていく。 他の人にコーヒーは入れるけど、チョコは、あげずに、俺だけにこっそり。 なんのメッセージもないチロルチョコを、紙袋には入れずにデスクの引き出しの上段にしまった。
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