二ノ宮さん

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「あ、そういえば、そうですね。俺は、どうでもいい同期とくだらない飲み会しかしませんねぇ」 へらっと笑っている。 社内であれだけ目立って、人気なら、逆に誘われる事だって多いだろうに。 普段なら、こう、はぐらかすように誤魔化されたら、後追いなんかしないのに、今日はちょっと酔っていたんだと思う。 前から噂では聞いていたことを本人に、直接聞いてみたくなった。 「サトダさん、社内の女の子とは、飲みにいかないんですか」 「え。あー。そうですね」 言葉を選んでいる。 社内の女性社員である私にはっきり聞かれて、ちょっと困っているのかもしれない。 あんなに人気なのに、なんでだろう。 うちの会社は別に社内恋愛禁止でもない。社内結婚している人もいるし、誰と誰が付き合っているらしいなんて噂を耳にすることもある。 「うちの社は、皆さん、良いお嬢さんたちだから。俺なんかが誘っちゃダメでしょう?」 優しい、遠回しな言葉で返ってきた。 お嬢さんたちとは遊べないということなんだろうか。
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