二ノ宮さん

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 年明け、頼まれていた資料作成の残業を終えて、そろそろ帰ろうとコートを羽織っていたら、デスクの電話が鳴った。 部署内には私を含め、数名が残業に残っているだけだ。 デスクに近寄って、受話器を取った。 「あ、二ノ宮さん? まだいました? 良かった」 毎日聞いている低い声が耳元で響く。 「はい。今、ちょうど終わったとこです」 「悪いんだけど、俺のデスクの上のメモ用紙みて、ちょっと教えて欲しいんですけど」 東京にいるサトダさんは、明日、そのままアメリカ出張に行くはずだ。 「はい? なんでしょう?」 返事をしながら、サトダさんのデスクに向かう。 「多分、メモになんか数字が書いてあるんですけど。Kとかついてる」 黄色いポストイットに、メモが英語と日本語交じりで書いてある。 「20-25K?かな」 メモ書きからそれらしい数字を読み取る。 「あー、それ。20-25ですね?」
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