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いつもなら、その辺で切り上げる電話だ。
「二ノ宮さんの声、眠気を誘導しますね」
「え? そうですか」
声が良いと言ってくれる人もいるけど、よく分からない。ちょっと低いのかもしれない。落ち着いているとか思われているのも、そのせいだろう。
「良い声ですよ。いつも、そう思う」
いつも?
いつも、というところが微妙に心に引っかかる。
普段仕事していて、なにも言われないけど、そう思っているんだろうか。
「アナウンサーっていうか、朗読のお姉さんのようですよ」
サトダさんがさっと付け加えた。
あぁ、良い声なんて言ってしまって、また「くみちゃん問題」に引っかからないように、良い声の意味付けをしているんだなと気が付いた。
分からない程度に、さりげないから、機転の利く人と思う。
「はは。そうですか。今度、寝られるように、朗読しましょうか?」
電話がすこし長引くのがうれしくて、適当なことを言った。
「え。お話、何を読んでくれるんですか?」
今夜はサトダさんも、ガードが緩いらしい。
すこし考えて、
「えっと、『エルマーの冒険』覚えています?」
と、真っ先に頭に浮かんだ本のタイトルを言った。
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