二ノ宮さん

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 次のサトダさんの東京出張の夜に、また突然、電話がかかって来た。 突然とはいえ、私は『エルマーの冒険』をテーブルに出していた。 もしかしてと思って、待っていた。 十時過ぎにかかけてきて、サトダさんは、またいい?とだけ聞いた。低い声が耳に響く。 「いいですよ。二章を読みますね」 2章を読んであげる。 チューインガム、ピンクのロリポップ、輪ゴム、長靴…… エルマーが鞄に詰めるもの。 私は、ここを暗記してしまっている。 読み終わって、耳を凝らす。 少し待ってもお返事がないので、通話ボタンを切った。 東京のどこかで、サトダさんが寝ている。
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