二ノ宮さん

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「二ノ宮さん、丁度ご飯、いくとこ?社食、一緒にどう?」 先輩の盛田さんに誘われて、林さんと一緒に社食に行った。 盛田さんは三十代後半で、新卒採用からずっと結婚後もここで働き続けている先輩だ。 「あー。もうちょっとで、バレンタインデーだね」 白身魚のフライ定食を食べながら盛田さんが思い出したように言う。 「あぁ。今年もいつもどおりで良いですよね? 今年、何人いますっけ?」 林さんが男性社員の数、女性社員の数を指で数えている。 林さんも少し私より年上で、新卒採用だったというからもう十年位働いている先輩だ。 部署内全体で、まとめて大きなチョコレートの箱をデンっと給湯室に置くのが、うちの義理チョコのやり方だと教えてくれた。 「ま、個人的にあげたい人は、あげるけど。義理は、それ以外良いからね」 上司だという義理にかこつけて、サトダさんになにか送ろうかと思ったけど、それは無理そうだった。 「ここ、良いですか?」 急に声をかけられて顔を上げたら、総務の杉浦さんが、ランチのトレイをもって、私の隣の席を指している。
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