二ノ宮さん

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サトダさんもようやく、お昼らしい。 「こないだの杉浦さんへの書類を用意したのは、サトダさんって話です」 説明しながら、腰を上げて、席を変わるか聞いた。 「ここ、お座りになられます?私はもう、お先にいただきましたから」 「ありがと」 私と交代で、席に着きながら、 「悪いんだけど、二ノ宮さん、午後の会議の書類、メールしてあるから、コピー、人数分いい?」 とお仕事を頼まれた。 「はい。了解です」 盛田さんと林さんに断って、先に仕事へ戻った。 サトダさんは、会社では本当に普通の上司だ。 二人で夜、電話するなんて、誰も知らない。 仕事上のチームワークは結構いいとおもう。 指示が的確だし、分からないことは、教えてくれる。 アシスタントとしての私の使い方も丁寧だと思う。こんな風に、急に昼休み中に雑用を頼まれることもすごく稀だ。いつもはもうちょっと時間に余裕のある頼み方をするか、時間がないことは、自分でやってしまう。 デスクに戻って、メールを開くと、ついさっき送られたばかりのメールがあった。 貼付の書類を一枚だけ印刷する。 なんだ。 これなら、普段のサトダさんなら、自分のデスクから印刷をかけて持っていくのになと思いながら、印刷しおわった書類をサトダさんのデスクに置いて、自分のデスクに戻ると、ちょっとして、サトダさんが温かいミルクティーを私のデスクにトンと置いた。 「さっき、昼休みなのに、仕事頼んで、わるかったね。ありがとう」 「いえ、大丈夫です。もう食べ終わってましたから」 サトダさんのほうが、忙しい。 ランチの時間もすごく短かった。 「これ、お詫びです」 ミルクティーを指して、そう言うと、自分のデスクに行ってしまった。 ミルクティーを前にお願いしたの、覚えていてくれたらしい。 ちょっと、嬉しくって、頂いたミルクティーで手を温めた。
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