美和さん

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タクシーに乗っても、サトダさんは、何にも言わない。 わたしも何も言えなかった。 あれは、いったい誰なんだろうか。 あの名前を呼ぶ感じ、以前、残業中に電話して謝っていた女の子達の一人だとは思えない。 なんだか必死だった。 声の奥に、真剣さがあったと思う。 それに気が付いているから、さっきから胃が痛くって、吐きそうだ。 スーツのスカートの上でバッグ抱えて、窓の外を見ている。 息をしよう。 吸って、吐く。それだけに集中する。 多分、サトダさんは反対側の窓の外を見ている。 きっと、あの人のことを考えている。
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