悠ちゃん

2/7
前へ
/208ページ
次へ
その週末、玄関で二ノ宮悠斗(にのみやはると)と書かれたところに、サインして、悠ちゃんの”家”を訪れる。 係の人に手を引かれて、悠ちゃんが”家族の部屋”へやってくる。 「久しぶり。悠ちゃん」 「あん!」 手を振ってくれたから、今日は機嫌がいいらしい。 悠ちゃんは、私の二つ上の兄だ。 生まれた時から障がいがあって、養護学校を卒業してから、しばらく自宅で母が面倒を見ながら、一緒に暮らしていたけれど、5年前に母が腰を痛めて以来、実家から1時間ほど離れたこの施設で暮らしている。 悠ちゃんは、私が心の奥に置いている大きな箱だ。 大事だけれど、隠している。蓋をしめて。 蓋を開けると、何が出てくるかわからない。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1753人が本棚に入れています
本棚に追加