悠ちゃん

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子供のころから、私の家族は悠ちゃん中心に回っていた。 悠ちゃんがいるから、しかたがない。 いろんなことが制約されても、それに文句を言うのはタブーだった。 悠ちゃんは、悪くないし、文句をいったら母がとても悲しそうするのが目に見えていた。父の機嫌も悪くなる。 家族旅行はあんまりしたことがないし、すこし大きくなってからは、私は友達をうちに連れてきたこともない。 悠ちゃんは、確実に家族の中心だったし、私にとって大事な存在ではあるけれど、私は、悠ちゃんを好きかどうかも分からない。 悠ちゃんが癇癪をおこして、家で暴れるのが嫌だった。 家族でお出かけしたら、いつ人前で癇癪を起すのかと、ドキドキした。 そんな時に、友達に会ったら、どうしようとか思った。 そして、そんなことを思う、優しくない私が一番嫌いだった。 それなのに、悠ちゃんが家で暮らせなくなった時、まるで始めっから悠ちゃんがいなかったかのように、私だけ実家でのほほんと暮らしているのが、ものすごく怖くなった。 実家から職場へは通おうと思えば通えたのに、私も家を出た。 そうすることで、私たち家族は、悠ちゃんをあきらめたのではなくって、子供は大きくなったら、家を出るのが当たり前だから、悠ちゃんも家を出たんだと自分に言い聞かせた。
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