悠ちゃん

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お話をよんでいたら、章の途中で飽きてしまった。キョロキョロ部屋の中を見渡して、椅子を揺すり始めた。 もう本をかたずけて、他の遊びをする。 施設の係の人が悠ちゃんたちが最近やっていることを見せてくれた。 ちぎり絵。 なんなのかわからないけど、悠ちゃんのアートは養護学校のころからセンスはあると思う。 モダンアート。 「持って帰ります?」 「はい、いただきます」 部屋にある、悠ちゃんの別の絵と交換しようと思う。 帰り際、私は、エルマーの本は置いていかない。代わりに、チロルチョコを3個置いていく。 この本は悠ちゃんにあげたものだけど、私が毎回持って帰る。 好きなのに、癇癪を起すと破ってしまうから。 一瞬前までのお気に入りが、破られ、投げられ、ゴミ箱に突っ込まれる。そして、後で、お気に入りが壊れてしまった事実に、泣く。 それを見て、育った。 何度も心のなかで一緒に泣いた。 「またくるね」 立ち上がって、そういうと、悠ちゃんがぎゅーっとハグしてきた。 ぎゅっとハグを返す。 「また来るよ」 そんなこと言って、月に1,2回来るだけだけど。 私は、そんな程度の妹だ。
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