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あの時、最初に大声で笑って、助けてくれた「サトダ」と呼ばれるその人は、同じ海外事業部の人らしいと知った。
30代後半で、背がまぁまぁ高く、スーツの似合う、がっしりした肩をした人だ。かなり仕事ができるらしく、地方都市にあるこの本社と支社のある東京を行ったり来たりしている。普通の人以上に働いている、いわゆるエリートだった。
あの時も私は同じ部署なのに、初めてちゃんと顔を合わせた。
歓迎会の終わりに、姿を探してお礼を言った。
「さっきは、ありがとうございました。変なこと言っちゃって、すみません」
お礼に頭を下げた。
「いやー、課長、面白かったですね。顔、引き攣ってた。牽制になっていいんじゃないですか?」
見上げると、そういって気楽に笑っていた。
あの時、別に男性社員を牽制するつもりで、言ったわけじゃなかったけれど、それ以後、この会社ではセクハラに近いことは否や、男性社員からプライベートな仕事の後の飲み会や、デートのお誘いも、全くない。
牽制が効きすぎたらしい。
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