百合ちゃん

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「杏、それ、好きでやってる?」 「そう」 頷くと、百合ちゃんが困ったように考えている。 好きなんだからしょうがない。 サトダさんのプライベートの声が聞こえる、あのひと時が堪らなく大切だ。 そんな事を思って、電話してる私の方がかなり不謹慎なのかもしれない。 「エルマーって、杏がよくお兄さんに読んであげるって言ってたやつだよね?」 いつも、私の話はふーんって適当に聞いているようだけど、そんな事を覚えていてくれたのか。 「そう。なんとなく手元にあったから。」 「……その人、特別なんだ」 ふっと百合ちゃんが笑う。 「そうじゃなかったら、杏がエルマーなんか持ち出さない気がする」 そうだろうか? よく分からない。 なんとなく、サトダさんにはいつか悠ちゃんの話をしてみたいと思うけど。 「いやー、今後、面白い話が聞けそうだわ!」 そう言って百合ちゃんが勝手に笑っている。
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