杏ちゃん

1/29
前へ
/208ページ
次へ

杏ちゃん

 一巻が終わっても、そのままサトダさんからの電話は続いている。 会社でのサトダさんは、いつもの通り、仕事に忙しい。夜の電話について、会社では未だに一切口にしない。 エルマーと竜は、もうカナリア島にいる。エルマーの家についてしてしまったら、全く別の冒険の三巻を読んでほしいと言われるかわからない。 今夜は読み終わったら、サトダさんが起きていた。 「杏ちゃん、鳥飼ったことある?」 二巻に入ったころから、急に電話で「杏ちゃん」と下の名前で呼ばれるようになった。会社では、相変わらず「二ノ宮さん」と名字で呼ぶ。 「いいえ。ペット、飼ったことがないんです」 「俺は犬だけ」 少しだけ、自分の事を話してくれる。 その時、サトダさんが会社と違って、砕けた話し方をするのが好きだ。
/208ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1753人が本棚に入れています
本棚に追加