杏ちゃん

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一次会だけで、簡単に酔ってしまって、そろそろ失礼して帰宅することにした。このまま二次会に行ったら、また忘年会の時のようにサトダさんに絡んで変な事を言ってしまいそうだ。 「お先に失礼します」 課長とサトダさんが居るところへ、挨拶すると、サトダさんがタクシーを捕まえてくれた。 本当に色んな事がさらっと出来る、スマートな人だと思う。 タクシーのドアを軽く支えて、私が乗り込むのを待ってくれる。 一瞬、このままタクシーに一緒に乗ってくれたら良いのに、と酔っている頭で、強く思った。 女の子をとっかえひっかえしているという噂なのに、私には指一本、触りもしない。 タクシーから、見上げると、サトダさんと目があった。 少しだけ、彼の目にもお酒の影が見える。 一瞬、目線を外せなかった。 「じゃ、気をつけて」 サトダさんに言われて、慌てて、ありがとうございました、と頭を下げた。 「明日、電話する」 ドアの閉まりかけに、一言だけ言った気がした。 タクシーが動き出して、どちらへ?と言われて、慌てて住所を言いながら、窓から振り返る。
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