くみちゃん

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 「それは、くみちゃん、仕事早いし、良いと思いますよ」 歓迎会から二、三週間後、給湯室で、コーヒーメーカーのフィルターを変えていたら、部屋の前で森本さんの話し声が聞こえた。 「そうだねぇ。やっぱり、くみちゃんに、サトダの補助、やってもらうんでいいか」 多分、これは課長。 この課のくみちゃんって、だれだろう?と一瞬思ったら、「くみちゃんじゃなくて、二ノ宮さん、でしょう?」と、諭すようなサトダさんの声がした。 私? びっくりして振り返ると、三人が給湯室へ入ってくるところだった。 「お。あ、ちょうど。二ノ宮さん」 課長が慌てている。しまった、という顔をしていた。 私は陰で『くみちゃん』とよばれているらしい。 ちゃん呼びでよんでくれるくらい、気軽に話しかけてくれないのに。 なんで、くみちゃん? 課長と森本さんの気まずそうな顔で、一瞬で分かった。 組合に訴えた「くみちゃん」。
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